Friday, December 6, 2013

メスの発情について-----栄養と病気-----

 
今年も残るところ、あとわずかになりました(12/7現在)。

ふじさわアビアン・クリニックも6/15で開院してから6ヶ月になります。

ここまで、なんとかやってこれたのも、お手伝いしてくれた、もと同僚の皆様、 お友達の皆様、協力していただいた患者様のお力があってこそと思っております。来年も鳥類、げっ歯類、うさぎの医療を通して、皆様と動物がより長く、楽しく過ごせるようお手伝いをしたいと思っております。

さて、今日のトピックは若鳥ではなく、大人の鳥、特にメス鳥の発情と栄養にまつわるお話をしたいと思います。

野生下の鳥は、大体条件の良い季節を選んで繁殖しますので、多くて年に1-2回繁殖します(条件が良い年はもう少し多く繁殖することがあります)。ところが、飼育下では、条件の良い室内が殆どですので、持続的に発情してしまうメス鳥は多いです。

持続発情は、慢性的な産卵(オスがいなくてもニワトリと同様産卵します)、産卵にまつわる生殖器系の障害(クロアカ脱、卵管脱、腹壁ヘルニアなど)、卵巣、卵管腫瘍、攻撃性の増加、毛引きなどの問題行動、そして、持続的な高コレステロール血症、高カルシウム血症から、動脈硬化、脂肪肝、カルシウムの臓器へ沈着など、本当に様々な病気を起こします。

メス鳥がオス鳥よりも明らかに寿命が短いのは、これらの病気が関わっているからといっても過言ではないと思います(人は女性の方が寿命が長いので、逆ですね)。

そういったわけで、なるべく発情をさせないようにすることが、メス鳥の飼育の重要な点です(繁殖させない場合)。

メス鳥を発情させない方法、皆さんはどういったことを思いつきますか?

大きく分けて飼い方を工夫する方法とお薬を使う方法があります。

まずは飼い方から。
1、餌のカロリーをおさえる。
2、暗い時間を長くする(長日繁殖の鳥)
3、巣を作らせない
4、発情相手(人間、おもちゃを含む)と一緒にしない

などがあげられます。

お薬は、注射、飲み薬などを用いて、発情ホルモンであるエストロジェンを下げる方法があります。

余談ですが、アメリカは小型鳥よりも大型鳥の方が多く、生殖器系の疾患もありますが、明らかに日本よりは少ないです。埋め込み式の発情抑制剤などを使用すると、半年くらいは発情せずにすみますが、薬剤が大きいため、大型鳥には使用できても、小型鳥にはやや難しい感があります。

前置きがながくなりましたが、、、ここで、今日のトピックである養とメスの発情がどう関係するかです

開院する前に、私はいくつかの病院を見させていただいたことがあります。そこで気づいたことは、ダイエットをしっかり指示している病院ほど、持続発情を示すメスが少ないということです。

飼い鳥は、餌が豊富にあるとカロリー過多になることが多くあります。このカロリー過多な鳥ほど、持続発情が多く見られるということです。もちろん、いくらダイエットをしても、オスが隣のケージにいつもいるような環境ではいけませんので、カロリーの制限のほかの環境も整える必要があります。しかし、食べ過ぎないようにダイエットをするという指示は、アメリカでも発情抑制のために行っており、発情を抑える大きなポイントであるといえると思います。

もちろん、鳥によって、ダイエットの必要がなかったり、病気の恐れがあったりで、ダイエットが出来ないこともありますので、必ず獣医師の指示を受けないと、お勧めは出来ません。無理なダイエットは命に関わることがあります。

また、発情を抑えるために、カロリーを制限するということは問題ありませんが、ビタミン、カルシウムを制限することはお勧めしません。ダイエット中でも、もちろんビタミンは必要ですし、また、カルシウムを制限すると、卵が出来てしまったときに軟卵になってしまう可能性があるからです。カルシウムを制限しても、発情がとまるわけではありません。

ただ、トップに載せているウズラは、カロリーを制限して、痩せてしまっても、なお産卵しようとします。よって、カロリーの制限も、個体、鳥種によっても、有効だったり、そうでなかったりします。ご家庭の子の状況によっても変わりますので、獣医師とよく相談して決めることをお勧めします。




 

Wednesday, September 18, 2013

奇怪な鳴き声の謎!?

今日は、病院内に響き渡る、ある奇怪な鳴き声についてお話したいと思います。

午前中は病院内の鳥さんたちが、活発な時間帯ですが、その時間帯にひときわ響き渡るコォォォォ~~~~~という声。その後クェ~、クェ~、クェ~と、およそ鳥とウサギ・げっ歯類の病院にいると思えない、摩訶不思議な動物の声が聞こえてきます。

しかし、この声は確かに鳥の声なのです。

この声の正体はこの鳥です。
↓↓













ヒメウズラのオス、ユキちゃんです。
体長は約10cmちょっと。体重は47gしかありません。
それなのに、それはそれは、大きな声で鳴きます。
ただ、意外なことに、他の鳥たちは、こんなに大きな声でも特にパニックになったりはしません。鳥の声だとわかっているのでしょう。

このヒメウズラのユキちゃん、実は、今まで病院を手伝ってくれていたDr.Yのペットで、Dr.Yがアメリカに留学に言っている間、お預かりすることになったのです。

運がよければ、ユキちゃんと会えるかもしれませんね。

Thursday, July 18, 2013

2012年イリノイ大学留学-----イリノイ大学、WEAMSについて、イントロダクション-----

大学の中心部にあるシンボル的な銅像

2012年6月から6ヶ月間、アメリカ、イリノイ州にあるイリノイ大学の獣医学部に留学し、WEAMS:Wild and Exotic Animal Medicineのチームで研修を行ってきました。ここでは、常勤獣医師が5名在籍し、鳥の認定医、爬虫類の認定医、小型哺乳類の認定医など、経験豊富な獣医師が来院した動物の診療、学生への教育を行っていました。今回は、このWEAMSの教室をアップしようと思います。




大学の空港

イリノイ大学はシカゴにもありますが、私が行ったのは、シャンペーン・アーバナ地方という、シカゴから車で2時間の距離のところに滞在しました。この大学はとても大きく、空港も大学の敷地内にあります。ただ、空港自体は小さく、タクシーも待っていませんでした。上の写真は空港の駐車場ですが、がらーんとしています。
 

獣医学科校舎

獣医学科の校舎はシャンペーン・アーバナ校、敷地内のはずれにあります。ここに毎日バスと自転車で通っていました。とにかく大学が大きいので、バスのルートも煩雑で訳がわからず、なんとか、バスで校舎の近くまで行き、後は自転車を使って通学していました。バスのない早朝は、自転車で1時間半かかって通学していました。行くだけでへとへとです。他の学生や先生方は車で通っていました。アメリカは車社会。話には聞いていましたが、車のない私には、少々大きすぎる大学でした。



WEAMSの診察室


Zoological Medicine and Surgery、現在のWEAMSは、通常の犬猫の診察室よりも離れたところにあり、デリケートな鳥、エキゾチック動物への配慮が伺えました。


校舎内

校舎は増築を重ねたらしく、迷路のようでした。WEAMSは犬猫、産業動物以外の動物を一手に引き受けてはいましたが、X線、CT、MRIなどのImagingが必要なときは、地下にあるImagingの教室まで、延々と歩かねばならず、ある時は小さなカナリアを抱えて、またある時は300Kgを超えるトラをストレッチャーに乗せて校舎を歩き回りました。
 
 
 

診察室、医局

学生が集まる医局のようなところです。大きな画面にX線の写真を写して、ディスカッションをします。
 
右はDr.Welleです。このDr.は、鳥の医療にたずさわって20年以上のキャリアを持ちます。AAV:Association of Avian Veterinarians(アメリカの鳥類医療の学会)の教育部門に関わり、この大学で、エキゾチック動物の診療を行い、学生に鳥類医療を教えています。この方に呼んでいただき、今回の留学が実現しました。
 
 
診察室は2つあり、どちらも広かったです。
 
 
 
 
おしまいに、鳥の写真を一枚・・・

今日の鳥:Red Throated Hummingbird(In U.S.A.)

ハチドリです。日本ではまずお目にかかれないと思います。しかし、イリノイでは普通に庭先にブーンと飛んできたりするので、全くめずらしくないようです(本当にハチのようにブーンと飛んできます)。ハチドリ用の餌がホームセンターに売っています。この鳥、体重が2.5gしかありません。体を維持するのに常に、高いカロリーを摂取せねばならないのですが、夜間は餌を摂取することが出来ません。その間、彼らの代謝はどうなっているかご存知でしょうか?私がお世話になったDr. Welleは、こう言っていました。”ハチドリは毎日夜間になると冬眠するんだ” ”驚きの鳥だろ?”
・・・確かに。毎日冬眠する鳥って面白いですね。この鳥は、民家の窓の下でうずくまっているところを発見されました。レントゲンもとりました。歯科用のCR(コンピューターレントゲン)を用いてみたところ、特に骨に異常はなし、ということで、翌日元気に羽ばたいたため放鳥されました。忘れられない鳥です。

Sunday, July 14, 2013

ヒナの栄養 ----栄養と病気-----

今日は栄養と病気、ヒナの栄養と病気について、少しお話したいと思います

昨今では、ペットショップでも容易にヒナ用のパウダーフードを見かけるようになりました。

しかし・・・・

一方で、アワダマだけでヒナを育てているという方も、まだまだ多くいらっしゃいます。いったいこのアワダマというのは何で出来ているかというと、剥いた粟に卵黄をくっつけているだけというものです。ヒナに必要なタンパク、カルシウム、ミネラル、ビタミン、全てにおいて不足しています。

ヒナには、一般的に20%前後のタンパク質が必要といわれています。しかし、アワダマのタンパク質は10%前後。圧倒的に足りません。カルシウム、ビタミン、ミネラルにいたっては、どのくらい入っているか見当もつきません。

アワダマで何とか育った子も中にはいらっしゃると思います。鳥用のパウダーフードが手に入らない時代もありましたので・・・。

たとえ話はあまり好きではないのですが、人にたとえると、昔、お米のとぎ汁で育った赤ちゃんもいますが、今はそんなことをする人はいません。赤ちゃん用のミルクをしっかりと使っていると思います。

アメリカのペットショップを何件か見てきましたが、このアワダマ、アメリカではもちろんありませんでした。実はヒナ用パウダーフード自体が、あまり置いてありません。鳥専用のフードであるペレット(ペレットについては、後日アップします)の種類は豊富においているのにかかわらず、です。アメリカでは、ヒナをペットショップに置くということは、動物福祉の観点からやめています。ペットショップには、大人の鳥しか存在せず、また、セキセイインコ、ジュウシマツ、コキンチョウ、カナリアなど、比較的小型の鳥しか展示していません。

オカメインコなどは、ブリーダーから、さし餌が終わったあたりに引き取るか、あるいは里子で引き取ります。里子制度は、非常に発展しており、私が驚いたことの一つです。この制度は後日報告するとして・・・。

よって、アメリカでは体が小さなオカメインコはあまり存在せず、体格も、肉付きもしっかりしたオカメインコが多く見られたというのが印象的でした。

日本では体格が小さかったり、指が曲がっていたり(指曲がり)、嘴が小さかったり、骨格が湾曲している鳥はまだまだ多くみられます(病気については後日アップします)。不適切な餌で育てること、親から離すのが早すぎることというのは、動物福祉にも抵触する問題ではないかと思います。動物福祉というのは、また難しいトピックですが、報告できればと思います。

ちょっと話はそれましたが・・・

この間、野生のスミレコンゴウインコのヒナのそのう(食道の一部が大きくなったもの)内容物の栄養を調べるというレポートを読みました。
スミレコンゴウインコというのは、こんな鳥です↓
 
 


南アメリカに生息する、青紫色のコンゴウインコです。
コンゴウインコなので、セキセイインコ、オカメインコとはやや違った栄養成分になりますが、ちょっと面白かったので、報告しようと思います。

その論文の中では、アマゾンの国立公園内の高い木に、幾つかの人工の巣をつくり、スミレコンゴウインコを誘致し、巣作りしてもらいます。雛が孵って数週間後、親がいないのを見計らって、研究者(協力者?)が、一本の綱を木の幹に引っ掛けるように登っていき、ヒナのそのう内の餌をサンプルにもらってくる、というものです。想像してみると、アマゾンの生い茂った木の上に登ってサンプルをとって来るのは、大変そうだなと思います。

結果は以下の通りです。

13日齢~77日齢のスミレコンゴウのヒナのそのう内容物
脂質 28.6%
タンパク質 23.5%
カルシウム 1.40%
リン 0.48%
カルシウム:リン=2.9:1
Mg 0.36%
K 0.73%
Cu 15ppm
Fe 2457ppm
Zn 44ppm
S 0.18%

脂質と、たんぱく質、特に脂質が、すごく高いのは、さすがコンゴウインコという気がしますが、カルシウム、リン比(カルシウム対リンの割合)が、ほぼ3:1というのも比率としてはものすごくカルシウムが高いです。

対して、アワの成分
脂質 2.7%
タンパク質 10.5%
カルシウム 0.014%
リン 0.28%
カルシウム:リン=1:20
Mg 0.11%
Fe 0.0048%

アワのたんぱく質の少なさ、カルシウムの少なさは、一目瞭然かと思います。特にカルシウム:リン比が1:20というのは、非常にバランスが悪く、たとえ、卵の成分をくっつけてもヒナに必要なカルシウムは補うことは出来ません。

セキセイインコ、オカメインコのヒナとスミレコンゴウインコのヒナは、全く違うので、極端な例でしたが、これだけヒナはタンパク、カルシウム、ミネラルを必要とするということは、ご理解いただけたのではないかと思います。

ちなみに、代表的なバードフード会社(複数)のヒナ用パウダーフードの栄養成分は以下の通りです。
脂質 7.0-11%
タンパク質 18-21%
カルシウム 0.5%
カルシウム:リン=2:1

恐らくスミレコンゴウインコは育てられませんが、セキセイインコ、オカメインコなどの鳥は問題ありません。

以上、ヒナの栄養についてでした。栄養に関係するヒナの病気については後日アップします。

Wednesday, July 10, 2013

長く楽しく動物と過ごすために:栄養と病気 イントロダクション

昨年は、アメリカのイリノイ大学のWEAMSというところで研修をしてきました。
ここでは、鳥とエキゾチック動物、野生動物、動物園動物を診療しており、鳥の獣医療の認定医爬虫類の認定医など、全部で5人の常勤、非常勤の獣医師が在籍していました。
本当に貴重な体験をしてきました。
そこでの体験は、また後日改めてアップするとして・・・

今後、栄養と病気ということをテーマにしてブログをアップしていきたいと思います。

というのも、研修中に鳥の認定医から言われたことが非常に悔しかったからです。
なんといわれたかというと・・・

「日本では、人間はヘルシーな物を食べているのに、鳥はジャンキーなものを食べているんだね。アメリカでは、人間がジャンキーなものを食べて、鳥はヘルシーな物を食べているから、丁度あべこべだね。HAHAHA」

また、

「アメリカでも20年前くらいは同じ状況だったよ。今では獣医師の努力によって、栄養にまつわる病気は少ないね」

とも言われました。

アメリカでは、ペットショップに行くと、ハリソン社、ズップリーム社、ケイティー社、ラフィーバー社、オックスボウ社などといった、ペレット(鳥専用、げっ歯類、ウサギ専用の餌)がずらりと並んでおり、皮付き混合餌も、もちろんありますが、割合で言うとペレットの方が多いかもしれません。

ペレットの話は、また後日アップするとして・・・

私は日本の獣医師が努力していないとは思えません。
そして、アメリカの全ての鳥が、ヘルシーな物を食べているかというと、そういうわけでもないということも今では知っています。

しかし、未だに栄養にまつわる病気が犬猫に比べても多いことは確かであり、飼い主様にもっともっと情報を提供する努力をしなければならないことは、間違いないと思います。

長く楽しく動物と過ごすために”というのは、私が病院を開院した目的の一つであり、多くの飼い主様が望むことだと思います。

ブログを公開することによって”長く楽しく動物と過ごす”ことに少しでも貢献できればと思いますので、お付き合いいただけると幸いです。



神奈川県、藤沢市にて、鳥とウサギ・げっ歯類の病院、ふじさわアビアン・クリニックを開院しました-***アビアン・クリニックの名前の由来について***

久しぶりのブログの更新です。
最終の更新はちょうど2年前、ロンドンで語学学校に通っていたころです。

その後、ロンドンから日本に帰り、次にアメリカはイリノイ州のイリノイ大学Wild and Exotic Animal Medicineの病院で研修し、日本に戻って神奈川県、藤沢市にてふじさわアビアン・クリニックを開業しました。


簡単の履歴はホームページの院長履歴http://www.f-avian.jp/page5.htm にのせていますので、ご覧ください。

ロンドン、アメリカでの体験は後日アップするとして・・・。

まず、ふじさわアビアン・クリニックの名前にある、”アビアン”とは一体なに??
と思われる方が多いようなので、開業して最初のブログは、名前の由来を説明したいと思います。

アビアンとは・・・
英語で書くとAvian、アメリカの発音でエイヴィアンです。

エイヴィアン・・・「あぁ、水のメーカーの」とか「エイリアンの病院?」とは思わないでください。
Avianとは”鳥”という意味です。

正確にはAvian, Rabbits and Rodents Clinicですが、長すぎるのでAvianに短縮し、読み方もヨーロッパ読みでアビアンに単純化しました。

英語圏ではAvian Clinicと聞けば、鳥の病院だなと、すぐ分かるほど一般化しています。Avianに関連する言葉として、Aviary(エイヴィアリー:鳥小屋、禽舎)、Aviculture(アビカルチャー:農業ならぬ鳥業、鳥のペット産業)などといった言葉もあります。

Avian Veterinary Medicine(鳥の獣医学)、あるいはExotic animal's Medicine(エキゾチック動物の獣医学)といえば、犬の獣医学、猫の獣医学と同様の大きな一つの学問であり、日本でも、もっともっと発展すべきカテゴリーだと思います。

また、海外を見て改めて思ったことは、日本の鳥類獣医学、エキゾチック動物の獣医学は海外に比べても遜色ない、すばらしい技術を持っているということです。そして、その素晴らしさを海外にもアピールしたいという思いがあります。

つまりは、日本の鳥類獣医学の発展に貢献したいという思いと、それを海外にアピールしたいという思いから、この名前をつけました。

・・・少し大げさになりました・・・

長々と説明しましたが、名前の由来は非常に明瞭で、要は藤沢にある鳥の病院です。

・・・うーん、こう書くと、あっけないほど単純ですね・・・